概要
Gateron Ink Black V2 は、カスタムメカニカルキーボード向けに設計された 5 ピンのリニアスイッチで、この製品は 70 個入りのパックです。結論から言えば、「軽さ」よりも「滑らかさと押し心地の密度」を求める人向けのスイッチで、初めての自作キーボードにも、既製ホットスワップ機のスイッチ交換にも使えます。仕様は作動力 60g、ボトムアウト力 70g、総移動量 4mm、ハウジングは透明スモークで、5 ピン(PCB マウント)構成です。
数字の意味を補足すると、60g という作動力は一般的な赤軸系(おおむね 45g 前後)よりはっきり重く、45g のリニアに慣れた指には「もう一段沈む」感覚があります。一方でボトムアウトまでの差が 10g と小さいため、押し込んだときの急な壁を感じにくく、底打ちまでの伸びが素直です。
打鍵感とサウンドの傾向
リニアスイッチはクリック感もタクタイルの引っかかりもないため、押下から底打ちまでが一直線です。Ink 系のハウジングは一般にサウンドが低めにまとまりやすいと言われており、実際にこのスイッチも「静音スイッチ」ではないものの、青軸のようなカチカチ音は一切出ません。音が気になる環境で使うなら、スイッチそのものよりもキーボードのケース素材・プレート材・吸音材の影響のほうが大きい、という前提で考えたほうが失敗しません。
注意したいのは「リニア=無音」ではないという点です。底打ち音とスプリングの共振音は残るため、静かな共有オフィスや録音環境で使うなら、打鍵の力を抜く、パームレストを使う、静音リングを併用するといった対策が現実的です。完全な静音を求めるなら、リニアではなくサイレント(静音)系のスイッチを最初から選ぶほうが近道です。
互換性ガイド
フォームファクタは MX 互換で、MX ステム(十字)を採用したキーキャップがそのまま使えます。端子は 5 ピン、つまり中央のセンターポールに加えて左右 2 本のプラスチック脚(スタビライザーレッグ)が付いた構成です。5 ピンはプレートを使わない基板直付け(PCB マウント)構成でスイッチが傾きにくく、実装時の姿勢が安定するのが利点です。
ホットスワップ対応の PCB であれば、ソケットの穴が 5 ピン用に開いていればそのまま挿し込めます。問題になるのは 3 ピン専用の基板で、この場合は左右のプラスチック脚が干渉して浮いてしまうため、(1) ニッパーで左右の脚を切り落として 3 ピン化する、(2) 5 ピン対応の基板・プレートに変更する、のどちらかが必要です。脚を切るのは一般的な対処ですが、切った後は元に戻せないため、先に 1 個だけ試し挿しして確認するのが安全です。
はんだ付けが必要な基板でも問題なく使えます。むしろ 5 ピンは仮固定が効くので、はんだ付け前にスイッチが傾いてしまう事故が起きにくく、初めてのはんだ付けビルドとは相性が良い構成です。ハウジングが透明スモークのため、下向き RGB LED の光はある程度透過しますが、完全透明ハウジングと比べると光量は落ち着きます。派手な発色を狙うなら、この点は割り切りが必要です。
差し込み時にもうひとつ確認したいのが、スイッチピンの曲がりです。輸送中にピンが折れ曲がったまま挿すとホットスワップソケットを壊すことがあるので、1 個ずつピンの向きを目視し、曲がっていればピンセットでまっすぐに直してから挿してください。ソケットの破損は基板ごとの交換になりやすく、スイッチ代よりはるかに高くつきます。
商品情報
仕様は前述のとおり、リニア/作動力 60g/ボトムアウト 70g/総移動量 4mm/5 ピン/透明スモークハウジング/70 個入りです。70 個という数量は、フルサイズ(104〜108 キー)を 1 台まかなうには足りませんが、テンキーレス(87 キー前後)でもわずかに足りず、65% や 60%、75% といったコンパクトレイアウトであれば予備を含めて十分にカバーできる量です。フルサイズを組むなら 2 パック必要になる、と考えて購入数を決めてください。
最新の価格は販売ページの表示でご確認ください。価格は在庫状況やセールで頻繁に変動するため、購入前に必ず商品ページで最新価格を確認してください。予算だけで選ぶなら国内流通の安価なリニアのほうが安く済むので、この価格を払う価値があるかは「滑らかさにどれだけ投資したいか」で判断することになります。
少数レビューの平均値は個体差や販売ロットの影響を受けやすいという前提で見ておくのが無難です。
競合スイッチとの比較
| 観点 | Gateron Ink Black V2 | 軽量リニア(例: 40gf クラス) |
|---|---|---|
| 作動力 | 60g | 40gf 前後 |
| 想定用途 | 長時間タイピング/重め好み | 高速連打/指の負担軽減 |
| 誤爆のしにくさ | しにくい | しやすい |
| 指の疲労 | 出やすい | 出にくい |
同じリニアでも、押下圧が 20g 違うと体感はまったく別物になります。40gf クラスの軽量リニアは指を置いただけで沈むほど軽く、連打や高速入力では有利ですが、手を休めたときの誤入力が増えます。逆に 60g の Ink Black V2 は、キーに指を乗せたまま考える時間が長い人ほど恩恵が大きく、誤爆がほとんど起きません。
どちらが優れているかではなく、自分の打鍵スタイルがどちらかという問題です。判断がつかない場合は、スイッチテスターや少量パックで両方を試してから 70 個を買うほうが、結果的に安く済みます。押下圧の好みは実際に触るまで分からないことが多く、レビューの点数では代替できない領域です。
導入手順とルブの考え方
ホットスワップ機であれば手順は単純です。キーキャップとスイッチをキープラーで引き抜き、ソケットの向き(上側が開口)を確認し、新しいスイッチを垂直に押し込みます。斜めに力を入れるとピンが曲がるので、必ず真上から押してください。全数を挿す前に、まず数個だけ挿してキー入力テストサイトなどで反応を確認すると、問題があったときの手戻りが小さくなります。
ルブ(潤滑)については、Ink 系はもともと素の状態でも滑らかさに定評があるため、必須ではありません。それでも打鍵音のばらつきやスプリングのシャリつきが気になる場合は、スプリングだけを軽くルブするだけでも印象は変わります。70 個を全数バラして塗るのは数時間仕事なので、まずは素のまま使い、不満が出た箇所だけ手を入れる順序をおすすめします。最初から全ルブ前提で計画を立てると、組み上げる前に力尽きます。
おすすめユーザー
- 長時間タイピングで誤爆を減らしたい人: 60g の作動力は、指を置いたままでも入力されない安心感があります。文章を書く時間が長い人ほど、この重さは疲労ではなく安定として効きます。
- カスタムキーボードを初めて組む人: 5 ピンなので基板上で傾きにくく、ホットスワップ機なら工具ほぼ不要で交換できます。70 個あればコンパクトレイアウト 1 台を予備込みで組めます。
- 静かめのリニアを探しているオフィスワーカー: クリック音は一切出ないため、共有スペースでも角が立ちにくい選択です。ただし完全無音ではない点は理解しておく必要があります。
- 既製キーボードの打鍵感だけを底上げしたい人: キーボードを買い替えず、スイッチ交換で滑らかさを取りに行くのは費用対効果の高いアップグレードです。
購入前の注意点
まず数量です。 70 個はフルサイズ 1 台には足りません。104 キーのフルサイズや、テンキーレスでも 87 キー構成なら 2 パック必要になります。「70 個入りだからフルサイズいける」と思って 1 パックだけ買い、あと十数個足りずに買い足す——というのが最も多い失敗です。自分のレイアウトのキー数を数えてから注文してください。
次に押下圧です。 60g は数値としては中庸に見えますが、赤軸(45g 前後)から乗り換えると明確に重く感じます。40g 以下の軽いスイッチを好む人、指の力が弱い人、長時間の連打が多いゲームを主にプレイする人には向きません。ここは慣れでどうにかなる場合もありますが、「重いと感じたら軽いスイッチに替える」と決めておかないと、70 個が引き出しの肥やしになります。
3 ピン専用基板との相性にも注意してください。 左右の脚を切れば使えますが、切ったスイッチは 5 ピン基板での安定性を失いますし、作業は 70 個分になります。手持ちの基板が 5 ピン対応かどうかは、購入前にソケット周りの穴を確認しておくのが確実です。
商品ページの表記も確認してください。 この商品は出品ページ上でブラック・レッド・ブルー・サイレントブラック・イエローなど複数のスイッチバリエーションが同一ページ内に並んでいる形式です。カートに入れる前に、選択されているのが Black(Ink Black V2)であることを必ず確認してください。加えて、Amazon の登録情報(メーカー名・型番・ASIN・数量)は実際の商品と食い違っていることがあります。商品画像とタイトル、そして選択中のバリエーション表示を突き合わせて、目的のスイッチかどうかを自分の目で確かめるのが安全です。
RGB の見え方も期待しすぎないでください。 透明スモークハウジングは光を通しますが、乳白や完全透明のハウジングほど明るくは光りません。ライティングを主目的に選ぶスイッチではない、と割り切ったほうが満足度は高くなります。
よくある質問
Q. 70 個でフルサイズキーボードを組めますか?
A. 足りません。フルサイズは 104 キー前後、テンキーレスでも 87 キー前後あるため、2 パック必要です。60%・65%・75% といったコンパクトレイアウトなら、予備を含めて 1 パックで足ります。
Q. ホットスワップ対応キーボードにそのまま挿せますか?
A. ソケットが 5 ピンに対応していればそのまま挿せます。3 ピン専用の基板では左右のプラスチック脚が干渉するため、脚を切るか基板側を変更する必要があります。
Q. 静音スイッチとして使えますか?
A. クリック音は出ませんが、静音(サイレント)スイッチではありません。底打ち音とスプリング音は残るので、無音を求めるならサイレント系のスイッチを選んでください。
Q. ルブ(潤滑)は必要ですか?
A. 必須ではありません。素の状態でも滑らかさは十分で、気になる場合にスプリングだけ軽くルブするのが現実的です。70 個の全ルブは数時間かかる作業になります。
Q. 赤軸から乗り換えると重いですか?
A. 明確に重く感じます。一般的な赤軸は 45g 前後、本製品は 60g です。軽いタッチを好む方には向かないので、可能ならスイッチテスターで感触を確かめてから購入してください。
販売情報
(Amazon参照)
- メーカー名: GATERON
- 販売元: BOBshop
- 出荷元: BOBshop
- ASIN: B09B4QQR8N
- 注記: 本記事はメーカー製造品をAmazon掲載情報に基づいて紹介しています。





