Mikrotik CCR1072 クラウドコアルーター 1072-1G-8S+ 72コア 1.2Ghz 16GB 8xSFP+ OSL6 は、机の上ではなくラックの中で評価すべき製品です。この記事では、カタログの数字がどこで効き、どこで期待を裏切るのかまで踏み込んで整理します。
概要
本機は Tilera Tile-Gx72(72コア・各1.2GHz)と 16GB の ECC RAM を搭載し、10G SFP+ ケージを 8 基、管理に使えるギガビットイーサネットを 1 ポート備えた 1U ラックマウント型のクラウドコアルーターです。RouterOS の最上位となる L6 ライセンスが付属するため、BGP フルルートの収容、MPLS、VRF、VPN 集約、細かい QoS まで機能制限なしに扱えます。結論を先に言うと、これは ISP・データセンター・大規模企業のネットワーク境界に据えるための機材であり、「家庭用より速いルーターが欲しい」という動機で買うものではありません。冗長ホットスワップ電源を 2 基備える構成からも、止められない回線に置くことを前提にした設計だと読み取れます。
72コア・1.2GHz をどう読むか
72 という数字は目を引きますが、1 コアあたりは 1.2GHz です。RouterOS はトラフィックをコネクションやフロー単位で複数コアに割り振るため、セッション数が多いほど 72 コアが効き、逆に「1 本の大きな転送で最大速度を出す」用途では期待ほど伸びません。10G のスピードテストを 1 セッションだけで回して「思ったより遅い」と感じるのは、この設計からするとほぼ想定内です。
公称される 1 億 2000 万パケット/秒級のスループットも、最小サイズのパケットを全ポート合算で流した理論値に近い条件の数字です。ファイアウォールのルール数、NAT のセッション数、キューやトンネルの有無で実効値は大きく変わります。ハイエンド機ほど「条件付きの最大値」と「自分の設定での実効値」を分けて考える必要があります。
互換性ガイド
物理ポートは 10G SFP+ ×8 とギガビットイーサネット ×1 という構成で、SFP+ ケージは CPU に直結されています。ここで最初に効いてくるのが、SFP+ モジュールが別売である点です。RJ45 の LAN ケーブルをそのまま挿せるのはギガビットの 1 ポートだけなので、10G 側は DAC ケーブルか光トランシーバ、あるいは 10GBASE-T の SFP+ モジュールを別途用意する必要があります。短距離のラック内接続なら DAC が扱いやすく、10GBASE-T モジュールは発熱と消費電力が大きいため、機器同士の相性も含めて慎重に選んでください。
内部拡張として M.2 スロット(Key-M・PCIe 2.0 x4・80mm 対応)を 2 基と microSD スロットを 1 基備えており、プロキシキャッシュ、User Manager、ログの保存といった用途に使えます。PCIe 2.0 x4 接続なので、最新の NVMe SSD を挿しても帯域は世代なりに頭打ちになります。メーカーの互換性情報では M.2 は NVMe を前提とし、SATA SSD は非推奨とされている点にも注意してください。
筐体は 1U ラックマウントで、マウントキットが付属します。設置側で確認したいのは、ラックの奥行きと前後のエアフロー、そして騒音です。冗長電源は運用中の交換に対応しますが、本来の意味を出すには 2 系統の給電に分けて挿す必要があります。同じテーブルタップから 2 本取っても、備えられるのは電源ユニットの故障だけです。スマートカードスロットも備わっており、認証まわりの要件が厳しい環境にも対応します。
商品情報
主な仕様は次のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| CPU | Tilera Tile-Gx72(72コア・1.2GHz) |
| メモリ | 16GB ECC |
| 10G SFP+ ポート | 8 |
| ギガビットイーサネット | 1 |
| RouterOS ライセンス | L6 |
| M.2 スロット | 2(Key-M・PCIe 2.0 x4・80mm) |
| microSD スロット | 1 |
| 電源 | 冗長ホットスワップ対応 2 基 |
| 形状 | 1U ラックマウント |
価格は 2026年7月9日取得時点で、eBay US に $2300.00 の出品が確認できました。ただしこのクラスの機材は新品・中古・並行輸入で実勢が大きく動き、為替や輸入時の税・送料も乗ります。ここに書いた金額はあくまで取得時点のスナップショットなので、購入前に必ず販売ページで最新価格と、新品か中古かを確認してください。
レビューは 2026年5月29日取得時点で 13 件・5つ星のうち 3.7(好評率にして約 74%)です。母数が 13 件と少なく、この手の業務用機材は用途が合わなかった購入者の低評価が平均を引き下げやすいため、点数そのものより、レビュー本文が自分と近い使い方かどうかを見るほうが判断に役立ちます。保証は購入店によって条件が異なるので、代理店保証の有無を先に確認しておくと安心です。
競合・後継機との位置関係
同じ MikroTik の中で比べると、性格の違いははっきりしています。小規模拠点や自宅ラボであれば RB5009UG+S+IN のような小型機のほうが、消費電力・騒音・設置性のすべてで現実的です。一方で本機は「多数のセッションを並列でさばく」ことに特化しており、コア数という一点では今も存在感があります。
ただし Tilera Tile-Gx はすでに新しい設計ではなく、MikroTik の新しい CCR シリーズは ARM 系のプロセッサへ移行しています。ARM 系は 1 コアあたりの性能が高いため、単一フローの速度や消費電力あたりの効率では新しい世代に分があります。長期の保守を前提にするなら、RouterOS の対応状況や部品の供給について販売元に確認しておくことをおすすめします。中古で安く手に入るなら魅力的ですが、「安いから新しい機種より得」とは限りません。
導入と初期設定の勘所
最初の接続は、10G 側のモジュールが揃っていなくても作業できるギガビットポートから行うのが簡単です。RouterOS は初期設定のままインターネット側に晒さないこと、管理者パスワードを真っ先に変更すること、使わないサービスを落とすことが基本になります。
ファームウェアと RouterOS のバージョンは、届いた時点で古いことが多いので、本番投入前に更新とリブートまで済ませておくのが安全です。設定は投入の前後でエクスポートして保管し、遠隔地に置く場合は締め出し対策(設定の自動ロールバック)を併用してください。ルールを 1 行間違えて自分の接続を切るのは、この手の機材で最も多い事故です。
おすすめユーザー
BGP フルルートを複数セッション収容する ISP、NAT やファイアウォールを数 Gbps 規模で回すデータセンター、拠点間 VPN を集約する大規模企業のネットワーク管理者に向きます。RouterOS のスクリプトや細かいキュー制御を自分で書ける人であれば、同等の処理能力を持つ商用ルーターよりはるかに低い費用で同じ役割を担わせられます。10G SFP+ を 8 本使い切る見通しがあり、ラックと 2 系統の電源、そして騒音を許容できる設置場所が確保できることが前提です。
逆に、光回線 1 本を家庭内に配るだけの用途や、無線 LAN まで 1 台で完結させたい用途には向きません。本機に無線機能は無く、PoE 給電も備えていないため、アクセスポイントやスイッチを別に揃える必要があります。
購入前の注意点
最大の落とし穴は、本体価格だけでは運用が始まらないことです。SFP+ モジュールや DAC ケーブルは 8 ポート分でまとめると無視できない金額になり、対向のスイッチにも 10G ポートが必要になります。総額で比較しないと、後から「本体は安かったのに」ということになります。
次に、消費電力と騒音です。冗長電源を積んだ 1U 機は小型ルーターとは桁の違う電力を使い、ファンも相応の音を出します。正確な値は製品ページやメーカーの仕様で確認してほしいのですが、少なくとも居室や静かなオフィスに置く機材ではないと考えてください。
三つめは世代です。前述のとおりコア単体は 1.2GHz で、単一フローの速度を求める用途とは相性がよくありません。「72 コアだからどんな処理も速い」という理解で買うと、確実に期待を外します。
四つめは掲載情報の食い違いです。この記事の元データでも、参照元は Amazon.co.jp の商品ページである一方、取得できた価格は eBay US の出品でした。通販ページの登録情報(メーカー名・型番・発売時期・価格)は、別商品の情報が混ざっていることが実際にあります。商品ページを開いたら、画像とタイトル、そして型番が 1072-1G-8S+ であることを自分の目で確かめてください。中古の出品では、電源ユニットが 2 基とも付属するか、ラックマウントキットが揃っているかも確認する価値があります。
よくある質問
Q. 家庭の光回線に使えますか。
A. 技術的には可能ですが、勧めません。無線機能が無く、消費電力と騒音が大きく、SFP+ モジュール代も別に掛かります。家庭用途なら同じ MikroTik でも小型機のほうが、総額でも使い勝手でも上です。
Q. 8 ポート全部で 10Gbps 出ますか。 A.
条件次第です。セッション数の多いトラフィックほど 72 コアに分散されて有利ですが、単一フローでは 1 コア 1.2GHz の制約を受けます。ファイアウォールのルール数や NAT、キュー設定によっても実効値は変わります。
Q. SFP+ ケージに 1G の SFP や 10GBASE-T モジュールは挿せますか。 A.
使えるモジュールの範囲はメーカーの互換性情報で確認してください。10GBASE-T の SFP+ は発熱と消費電力が大きく、ポートを埋めるほど放熱の条件が厳しくなる点に注意が必要です。
Q. M.2 スロットには何を入れるのが正解ですか。
A. プロキシキャッシュ、User Manager のデータベース、ログの保存などです。PCIe 2.0 x4 接続で、メーカーの案内では SATA SSD は非推奨とされています。
Q. RouterOS のライセンスを別途買う必要はありますか。
A. 本製品には L6 が付属します。L6 は最上位で機能制限が無いため、購入後に追加でライセンスを買う必要は基本的にありません。





