Glorious Lynx 5ピン潤滑済みリニアキースイッチ 36個入りは、キーボードを分解せずに打鍵感だけを入れ替えたい人のための、工場ルブ済みリニアスイッチです。この記事では、36個という数量が実際のキーボードで足りるのか、5ピンと3ピンの違いで何が起きるのか、そしてどういう人は買わないほうがいいのかまで踏み込んで整理します。
概要
Glorious Lynx は、ホットスワップ対応キーボード向けの工場潤滑済み(ファクトリールブ)リニアスイッチです。リニアなのでタクタイルの引っかかりもクリック音もなく、押し始めから底打ちまで抵抗が一定に増えていく素直な感触になります。結論から言えば、「ホットスワップ基板を持っていて、自分でルブを塗る作業はやりたくないが、標準スイッチのザラつきは気になる」という層にちょうど収まる製品です。
Amazon.co.jp のレビューは 2026年6月時点で 615件・5つ星のうち4.5(好評率にして約90%)と、スイッチ単体の製品としては十分な母数があります。この評価は「打鍵感が期待どおり」という声と、「ピン数の確認をしていなくて挿さらなかった」という声の両方が混ざりやすいカテゴリなので、星の数そのものより、下の互換性ガイドを読んで自分の基板に合うかを先に確かめるほうが確実です。
重要なのは、これはキーボードではなくスイッチ36個の袋だという点です。ホットスワップ対応でない(スイッチが基板に半田付けされている)キーボードを持っている場合、この製品を買っても半田ごてを出す作業から始まることになります。
互換性ガイド
スイッチ自体のステム形状は Cherry MX 互換の十字ステムなので、Cherry MX 用のキーキャップはそのまま流用できます。問題になるのはキーキャップ側ではなく、基板側のソケット形状です。
| 確認項目 | 本製品の仕様 | 失敗しやすい点 |
|---|---|---|
| ピン数 | 5ピン(中央の金属端子2本+プラスチックの位置決めピン2本+中央ボス) | 3ピン基板では位置決めピン2本のカットが必要 |
| 対応ソケット | Cherry MX / Gateron / Kailh 互換ホットスワップソケット | 半田付けタイプの基板には非対応 |
| 対応キーボード | Glorious GMMK シリーズ、その他 MX 互換ホットスワップ機 | GMMK1(3ピン)はピンカット必須 |
| 数量 | 36個 | フルサイズ104キーには2〜3箱必要 |
| 動作電圧・電流 | 5V / 500mA | キーボード用途では実質気にしなくてよい |
| 材質 | ポリカーボネート、ナイロンPA12、POM、ニッケルメッキ | ハウジングの素材で音色が変わる |
5ピンと3ピンの違いは、慣れていないと分かりにくいところです。5ピンスイッチは底面に金属端子2本のほかにプラスチックの脚が2本生えていて、これがプレート無し構成でもスイッチをまっすぐ立たせてくれます。3ピン設計の基板(GMMK1 がこれに当たります)にはその脚を受ける穴が開いていないため、ニッパーでプラスチックの脚2本を根元から切り落としてから挿す必要があります。電気的な接点は中央の金属端子2本だけなので、脚を切っても動作には影響しません。
カット作業自体は1個あたり数秒ですが、36個ぶん、2箱買ったなら72個ぶん繰り返すことになります。刃が斜めに入って根元が出っ張ったまま残ると、スイッチが基板から浮いてキーの高さがそろわなくなるので、平らな刃のニッパーを使い、切った後に指で底面をなでて出っ張りが無いか確認するのが確実です。この作業に抵抗があるなら、最初から3ピン版として売られているスイッチを選んだほうが精神衛生に良いです。
プレート無し(プレートレス)構成の自作キットに使う場合は、5ピンのまま使えるのが利点になります。プレートがスイッチを支えてくれない構成では、位置決めピンの有無がそのまま実装のしやすさに直結します。
商品情報
主要な仕様は、リニア軸・5ピン・工場潤滑済み・1パック36個です。ハウジングにポリカーボネートとナイロンPA12、ステムに POM、端子にニッケルメッキという構成で、ポリカーボネート系ハウジングは一般的にやや高めで澄んだ打鍵音になりやすい組み合わせです。ただし実際の音は装着するキーボードのケース素材やマウント方式、キーキャップの厚みで大きく変わるため、「このスイッチだから必ずこの音になる」とは言えません。
仕様表の「寸法(1個あたり)約1 x 1 x 2 mm」は、明らかに収集ミスです。MX 互換スイッチの実寸はハウジングだけで15mm前後あり、1mm角のスイッチというものは存在しません。単位か桁の取り違えと考えられるので、この数値は当てにしないでください。設計データとして正確な寸法が要るなら、MX 互換の標準寸法を参照するか、メーカーの公式資料で確認してください。
価格は取得時点によってかなり動いています。2026年6月12日の取得時点では ¥1,990、2026年8月27日の取得時点では同じ ASIN で ¥4,840 でした。1個あたりに直すと、¥1,990 なら約55円、¥4,840 なら約134円です。同じ商品ページでこれだけ差が出るのは、出品者が入れ替わったか在庫状況が変わったためと考えられます。したがって「1個55円の格安スイッチ」という前提で買い物計画を立てると外れる可能性があります。必ず購入時点の価格を商品ページで確認し、そのうえで下の「必要箱数」の計算をしてください。なお本記事の価格はいずれも上記の取得時点のもので、セールや出品者の変更で変動します。
必要な箱数は、キー数を36で割って切り上げます。60%配列(61キー)なら2箱で72個と余りが出ます。テンキーレス(87キー)なら3箱で108個、フルサイズ(104キー)でも3箱で足ります。2箱=72個ではテンキーレスに15個足りないので、ここは間違えやすい境目です。交換中に破損させる可能性も考えると、ぴったりではなく1箱ぶんの余裕を見ておくと安心です。
販売ページは Amazon.co.jp(ASIN: B09315SRHY)で、eBay にも同種の出品がありますが、そちらは価格表示が固定されていないため参考程度に見てください。
競合製品との比較
工場潤滑済みリニアというカテゴリは、ここ数年で選択肢がかなり増えました。Gateron の Oil King や Ink 系、Akko の一部リニア軸、Cherry の新しい潤滑済みラインなど、同じ「箱から出してそのまま使える」性格の製品が並んでいます。Glorious Lynx が有利なのは、GMMK シリーズを使っている場合に純正の組み合わせとして情報が探しやすいことと、36個という小分けパックで「まず1箱試す」ができることです。
一方で、36個パックは大量に必要な人には割高になりやすい構成でもあります。90個や110個の大袋で売られている他社スイッチと1個あたりで比べると、パック単価次第で逆転します。フルサイズを丸ごと組むつもりなら、購入前に「必要数 ÷ パック数量 × パック価格」を両方の候補で計算してから決めてください。
打鍵感そのものの比較は、数値で示せる部分がほとんどありません。押下圧やストローク量の公称値がこの記事のデータには含まれていないため、「他社製より軽い/重い」と断定することは避けます。気になる場合は、スイッチ単体を数個だけ売っているサンプル販売を利用するのが、36個を無駄にしないいちばん確実な方法です。
実際の使用感と交換手順
交換作業自体は難しくありません。キーキャップを引き抜き、スイッチプラー(引き抜き工具)でスイッチの上下のツメをつかんで垂直に引き抜き、新しいスイッチのピンが曲がっていないことを確認してから、まっすぐ押し込みます。1台ぶんで30分から1時間ほど見ておけば十分です。
つまずくのはほぼ1点、ピン曲がりです。輸送中や袋の中で金属端子が内側に倒れていることがあり、そのまま押し込むとピンが折れるか、ソケットの中で曲がって接触不良になります。挿す前に底面を目視し、端子が2本とも平行にまっすぐ伸びているかを確認してください。曲がっていればピンセットでそっと戻せば使えます。挿した後に反応しないキーがあったら、力任せに押し込まず、いったん抜いてピンを見るのが正解です。
工場潤滑済みとはいえ、ルブの量には個体差があります。何個かに1個、スプリングの擦れ音(いわゆるスプリングピング)が気になる個体が混ざることはこの種の製品では普通に起こります。気になる場合はスペースキーなど目立つ位置を避けて配置するか、その数個だけ手でルブを足すという対処ができます。全数を塗り直す必要はまずありません。
おすすめユーザー
- ホットスワップ対応キーボードを既に持っている人 — 半田付け不要で、工具はスイッチプラーだけで済みます。打鍵感を変える改造としては最も手軽な部類です。
- 自分でルブを塗る作業をしたくない人 — ルブ、筆、スイッチオープナー、そして数時間の作業時間を省けます。この手間を金額に換算できる人ほど、工場潤滑済みの価値は大きくなります。
- 静かめの環境で使いたい人 — リニアなのでクリック音は出ません。ただし底打ち音は残るので、無音にはなりません。
- GMMK シリーズのユーザー — GMMK2 以降の5ピン対応機なら、加工なしでそのまま挿せます。
- プレートレス構成の自作キットを組む人 — 5ピンの位置決めピンがそのまま生きるので、実装が安定します。
購入前の注意点
商品ページのピン数表記が食い違っています。 この製品は仕様上5ピンですが、商品ページのタイトル側には「3ピン」と書かれている表記が確認できます。どちらを信じるかで、ニッパーが必要かどうかが変わってしまう重要な点です。購入前に商品画像でスイッチ底面を拡大し、プラスチックの脚が2本生えているか(5ピン)、金属端子2本と中央ボスだけか(3ピン)を自分の目で確認してください。Amazon の登録情報は出品者が入力するもので、こうした誤りは珍しくありません。同様に、仕様表の寸法(1個あたり約1×1×2mm)も明らかな誤記なので、そのまま信じないでください。
価格の振れ幅が大きいです。 前述のとおり、同じ ASIN で ¥1,990(2026年6月12日取得時点)と ¥4,840(2026年8月27日取得時点)という2つの記録があります。後者の価格だと1個あたり約134円になり、「コスパの良い工場潤滑済みスイッチ」という評価は成り立ちにくくなります。買う価値があるかは、そのときの実売価格を見てから判断してください。
36個で足りるかを先に数えてください。 テンキーレス(87キー)を2箱(72個)で組もうとして足りない、というのがいちばんありがちな失敗です。配列のキー数を数え、36で割って切り上げた数を買ってください。
ホットスワップ非対応のキーボードには使えません。 正確には「使えるが半田付けが必要」です。既存スイッチを1個ずつ半田を吸い取って外す作業になるため、手軽な改造ではなくなります。手持ちのキーボードがホットスワップかどうかは、キーキャップを1個外してスイッチの周りに丸いソケットが見えるかで判別できます。
リニアが合わない人は一定数います。 タクタイルやクリックの「押した感」に慣れていると、リニアは底打ちするまでフィードバックがなく、打鍵が重く感じたり打ち間違いが増えたりすることがあります。リニアを使ったことがない場合、いきなり36個買うより、数個のサンプルで試すほうが損が小さいです。
ルブ済み=完璧ではありません。 個体差は残ります。すべてのスイッチが完全に均一な感触になることを期待すると、期待値が高すぎます。
よくある質問
Q. 手持ちのキーボードに挿せるか、どう確認すればいいですか。
A. キーキャップを1個外してください。スイッチの根元に丸いソケットが見えればホットスワップ対応です。基板に直接半田付けされているなら、この製品は加工なしでは使えません。
Q. 5ピンのまま3ピン基板に挿してはいけませんか。
A. 挿さりません。プラスチックの脚を受ける穴が無いため、無理に押し込むと基板やスイッチを壊します。ニッパーで脚2本を根元から切ってから挿してください。電気的な動作には影響しません。
Q. フルサイズキーボードには何箱必要ですか。
A. 104キーなら3箱(108個)です。87キーのテンキーレスでも3箱必要で、2箱(72個)では足りません。60%配列(61キー)なら2箱で足ります。
Q. キーキャップはそのまま使えますか。
A. Cherry MX 互換の十字ステムなので、MX 用キーキャップはそのまま流用できます。
Q. 自分で追加のルブを塗る必要はありますか。
A. 基本的に不要です。スプリング由来の擦れ音が気になる個体が混ざった場合だけ、その数個に手を入れれば十分です。全数を塗り直すなら、そもそも未潤滑スイッチを買ったほうが安く済みます。
Q. レビュー評価はどのくらいですか。 A.
Amazon.co.jp で 2026年6月時点、615件のレビューで5つ星のうち4.5(約90%)です。ただしスイッチ類の低評価は「互換性を確認せずに買った」ケースが含まれやすいので、評価より先に自分の基板のソケット形状を確認してください。
商品情報
(Amazon参照)
- メーカー名: GLORIOUS
- 販売元: AIQA Market
- 出荷元: AIQA Market
- ASIN: B09315SRHY
- 注記: 本記事はメーカー製造品をAmazon掲載情報に基づいて紹介しています。





