概要
Jingelmall Corsair製AIOクーラー用 LGA1700マウントキット(H60・H100i・H150i・H115i・H100x対応)は、すでに手元にある Corsair の簡易水冷(AIO)クーラーを、Intel 第12世代 Alder Lake 以降が使う LGA1700 ソケットへ取り付け直すための金具セットです。パッケージ内容は LGA1700 用バックプレート1枚とスクリュー4本のみで、材質はステンレススチール。ポンプもラジエーターもファンも入っていません。つまりこれは「クーラーを買う製品」ではなく、「持っているクーラーを延命する部品」です。
結論から言うと、向いている人はかなり限定されます。対応表に載っている Corsair 製 AIO を現に使っていて、CPU を LGA1700 世代(Core i5-12600K、Core i7-13700K、Core i9-13900K など)に載せ替えるときに、取り付け金具だけが合わない——この一点を数千円で解決するための製品です。逆に言えば、対象クーラーを持っていない人にとっては何の価値もありません。
Amazon.co.jp のレビューは77件・好評率90%(5つ星のうち4.5、2026年5月29日取得時点)で数字自体は悪くありませんが、母数が77件と小さいこと、そして「どの世代のクーラーに付けたか」で評価が割れやすい種類の製品であることは頭に入れておいてください。平均星の高さより、自分のクーラーの型番が対応表に一致するかどうかのほうが、この製品では何倍も重要です。
LGA1700 で何が変わったのか
そもそもなぜ専用の金具が要るのか、という話から整理します。Intel の LGA1700 は、それ以前の LGA115x / LGA1200 とクーラー取り付け穴の間隔が違います。LGA1200 までが 75×75mm だったのに対し、LGA1700 は 78×78mm。わずか3mmですが、バックプレートのネジ穴は当然合わなくなります。ここが「クーラーは使えるのに付かない」の正体です。
もう一つ、見落とされやすいのが高さ方向の違いです。LGA1700 は CPU パッケージとソケットを合わせた高さが以前の世代とわずかに異なるため、スタンドオフ(支柱)の長さも作り直す必要があります。仮に穴位置だけ無理やり合わせても、支柱長が合っていなければコールドプレートの圧着が弱すぎる/強すぎるという結果になり、温度が数℃〜十数℃単位で悪化します。「ネジが入ったから成功」ではない、というのがこのカテゴリの厄介なところです。
さらに LGA1700 は CPU のヒートスプレッダが長方形で、固定金具(ILM)で締めたときにわずかに反りが出やすいことが知られています。この対策として社外のコンタクトフレームを併用する人もいますが、本キットはあくまでクーラー側の取り付け金具であって、反り対策の製品ではありません。役割を混同しないでください。
なお第12世代・第13世代・第14世代はいずれも LGA1700 で共通なので、この3世代の間ならマウントは同じ考え方で通用します。より新しい Core Ultra 世代は別ソケットであり、本キットの対応表に書かれているのは LGA1700 のみです。それ以外での使用は想定外と考えてください。
互換性ガイド
対応ソケットは Intel LGA1700 のみです。AMD の AM4/AM5、Intel の LGA1200 以前、LGA20xx 系には使えません。対応クーラーとして挙げられているのは以下です。
| 対応クーラー | 備考 |
|---|---|
| H60(2018年モデル) | 発売年まで含めて一致しているか要確認 |
| H100x RGB Platinum | Platinum 系 |
| H100i RGB Platinum / H115i RGB Platinum | Platinum 系 |
| H100i / H115i / H150i Elite Capellix RGB | Capellix 世代 |
| ELITE LCD シリーズ | 液晶ヘッド搭載モデル |
| PRO XT シリーズ | 商品説明に記載あり |
電源コネクタは4ピンタイプ、冷却方式は水冷(AIO)、対応デバイスはデスクトップという前提です。ここで一番つまずくのが「H100i」「H115i」という呼び名の重複です。Corsair はこの名前を RGB Platinum、PRO XT、Elite Capellix、Elite LCD と何世代にもわたって使い回しており、世代が違えばポンプヘッドの固定方式そのものが違います。箱や保証書、あるいはポンプヘッド裏面の CW-9060xxx 形式の型番まで確認してから買ってください。「H100i だから大丈夫」は通用しません。
また、当然ですが本キットにはクーラー本体・ラジエーター・ファン・チューブは含まれません。ラジエーターをケースに固定できるかどうか(240mm/280mm/360mm が天面や前面に入るか、メモリやVRMヒートシンクと干渉しないか)は、キットではなく既存のクーラーとケース側の問題です。移設のタイミングでケースごと変えるつもりなら、そちらの寸法も先に測っておくと二度手間になりません。
商品情報
本製品は Corsair 純正ではなく、サードパーティブランドの Jingelmall が販売しています。Amazon.co.jp での価格は2026年5月29日取得時点で ¥3,740(税込)でした。価格は変動しますし、セールや在庫状況でも動くため、実際に購入する際は商品ページで最新の価格を確認してください。eBay 側には固定の金額提示がなく、出品ごとに価格が異なります。
内容物は LGA1700 用バックプレート1枚とスクリュー4本、材質はステンレススチール。金属製で剛性があり、樹脂バックプレートのようにネジ穴が舐める心配が少ない点は評価できます。市場での位置づけは、Corsair 製 AIO ユーザー向けのアクセサリー/アップグレードパーツで、コスト重視の選択肢です。
数字で見れば、この金額は 240mm クラスの新品 AIO クーラー1台の1割前後に収まる支出です。既存のクーラーがまだ健全(ポンプ音が正常、水温・CPU温度が以前と変わらない、購入から数年以内)であれば、金具だけ買い足す判断は合理的です。逆に購入から5年以上経っていて、そろそろポンプの寿命が気になるという状態なら、数千円を延命に使うより新品へ移行したほうが結果的に安く付くこともあります。
取り付けの流れと失敗しやすい点
作業自体は難しくありませんが、手順を飛ばすと温度で痛い目を見ます。おおまかな流れは、①既存クーラーのポンプヘッドを外す、②古いバックプレートとスタンドオフを撤去する、③本キットのバックプレートをマザーボード裏から当て、付属スクリューで固定する、④CPU とコールドプレートの古いグリスを完全に拭き取る、⑤新しいグリスを塗る、⑥ポンプヘッドを対角線順に少しずつ均等に締める、の6段階です。
よくある失敗は3つあります。1つ目はグリスの塗り直しを省くこと。一度でも剥がした熱伝導グリスは密着が戻らないので、必ず新品を用意してください。2つ目は締めすぎ。4本のネジを1本ずつ最後まで締めると圧が偏ります。対角線順に数回に分けて、止まるところで止めるのが基本です。3つ目はエア噛みで、ポンプヘッドがラジエーターの最上部より高い位置に来る配置にすると、air が集まってジー音や冷却低下の原因になります。移設ついでにラジエーター位置を変えるときは特に注意してください。
作業前にマザーボードをケースから外せるなら外したほうが確実です。バックプレートの交換はマザーボード裏側へのアクセスが必須で、ケース背面の開口が小さい製品では、結局降ろすことになります。
他の選択肢との比較
金具を買う以外にも道はあります。判断材料として並べておきます。
| 選択肢 | 向いている状況 | 弱点 |
|---|---|---|
| 本キット(社外マウント) | 対応クーラーが健在で、出費を抑えたい | 純正ではなく、保証の扱いが不透明 |
| メーカー純正のリテンションキット | 保証や確実性を重視する | 年数が経つと入手性が落ちる |
| LGA1700 対応の新品 AIO へ買い替え | クーラーが古い/ポンプに不安がある | 費用が一桁違う |
| LGA1700 対応の空冷へ乗り換え | 静音性より信頼性・寿命を取りたい | ケース内の見た目とクリアランスの再検討が要る |
Corsair は LGA1700 登場時、対応クーラー向けの純正リテンションキットを用意していました。現在も入手できるかはメーカーサポートに問い合わせて確認する価値があります。純正が手に入るなら、まずそちらを検討するのが筋です。社外品を選ぶのは「純正が手に入らない」「待てない」場合、というのが本来の順序だと考えています。
おすすめユーザー
- 対応表の Corsair AIO を現に使っていて、LGA1700 へ移行するユーザー: クーラー本体を買い替えず、金具だけで済ませられます。数千円と新品 AIO の差額は、そのままグラフィックボードやメモリの予算に回せます。
- 数年以内に買った高性能 AIO を持っているユーザー: 360mm クラスや液晶ヘッド搭載モデルを手放すのは惜しいので、延命の費用対効果が高い部類です。
- Corsair のエコシステムを維持したいユーザー: iCUE でのファン制御や RGB の統一感を崩さずにプラットフォームだけ更新できます。
- 自分でマザーボードを降ろして作業できるユーザー: バックプレート交換が前提なので、ケースから一度外す手間を許容できる人向けです。
購入前の注意点
まず、これは Corsair 純正品ではありません。品質や公差が純正と同等である保証はなく、社外の金具でクーラーを固定したことが保証の扱いにどう影響するかも、メーカーの規定次第です。高価な AIO を使っているなら、購入前に一度メーカーサポートへ純正キットの在庫を確認することを勧めます。それで純正が入手できるなら、そちらが安全です。
次に、対応リストの読み方です。前述のとおり「H100i」「H115i」という名前は複数世代で使い回されており、製造時期やリビジョンによって取り付け方式が異なります。名前の一致ではなく、CW-9060xxx 形式の型番と発売世代まで突き合わせてください。ここを確認せずに買って「ネジ穴が合わない」となるのが、この種の製品で最も多い失敗です。
レビューの母数が77件(2026年5月29日取得時点)と小さい点も割り引いて考えるべきです。好評率90%という数字は、対応クーラーに正しく付けた人の感想が中心である可能性が高く、非対応の組み合わせで困った人はそもそもレビューを書かずに返品している場合があります。星の数を互換性の保証と読み替えないでください。
また、Amazon の商品ページに登録されているメーカー名・型番・ブランドといった情報は、実際の商品と食い違っていることがあります。読者の皆さんが同じページを開いたときに混乱しないよう書いておくと、購入前には掲載スペックの文字情報だけでなく、商品画像に写っている金具の形状と、タイトルに書かれた対応モデルを必ず突き合わせてください。画像でバックプレートの穴位置とスクリューの本数が確認できれば、登録情報の誤りにも気づけます。
最後に、この製品を付けても冷却性能そのものは上がりません。あくまで「取り付けられるようにする」部品であり、温度が下がるとすればグリスを塗り直した効果か、以前の取り付けが不適切だったかのどちらかです。性能向上を期待して買う製品ではない、という点は割り切ってください。
よくある質問
Q. 純正のリテンションキットと何が違いますか。
A. 役割は同じですが、本製品は Jingelmall によるサードパーティ製です。純正が入手できる状況なら純正を優先し、入手性や納期の都合で難しい場合の代替と考えるのが妥当です。
Q. 第13世代・第14世代の CPU でも使えますか。
A. これらはいずれも LGA1700 ソケットなので、同じ考え方で使えます。ただし対応の根拠はソケット形状であり、クーラー側の型番が対応表に含まれていることが前提です。
Q. AM5 や LGA1200 に使えますか。
A. 使えません。対応ソケットは Intel LGA1700 のみで、穴位置が異なる他のプラットフォームには流用できません。
Q. 取り付けにグリスの塗り直しは必要ですか。
A. 必要です。ポンプヘッドを一度外す作業になるため、古いグリスを拭き取って新しいものを塗り直してください。グリスは本キットに含まれていないので別途用意が要ります。
Q. これを付けると CPU 温度は下がりますか。
A. 互換性のための部品であり、冷却性能を上げる製品ではありません。温度が下がった場合は、グリスの塗り直しや取り付け圧の適正化による副次的な効果です。
Q. クーラー本体は付属しますか。
A. 付属しません。内容物はバックプレート1枚とスクリュー4本のみで、ポンプ・ラジエーター・ファン・グリスはいずれも含まれません。


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