PCケースを自作する|設計の考え方と、小規模工房のケースメーカー一覧
既製のケースで満たせない要求(設置場所の寸法、静音、特殊な冷却)がある場合、自分で作るか、少量生産の工房に頼ることになります。どちらも選択肢としては現実的です。
守るべき規格寸法
ケースは自由に作れますが、マザーボードのネジ位置と拡張スロットの位置だけは規格で決まっています。ここを外すと市販の部品が付きません。
とくに拡張スロットは、板の穴の位置とマザーボードのスロット位置が連動します。1mmずれるとカードが挿さりません。
| 規格 | 基板の寸法 | 拡張スロット |
|---|---|---|
| ATX | 305 × 244 mm | 7 |
| MicroATX | 244 × 244 mm | 4 |
| Mini-ITX | 170 × 170 mm | 1 |
| Mini-DTX | 203 × 170 mm | 2 |
板厚と素材
鋼板なら0.8mm以上、アルミなら1.5mm以上が目安です。これより薄いと、持ち上げたときにたわみ、マザーボードに力がかかります。
アルミは加工しやすく軽い一方、鋼板より柔らかいので厚みが要ります。3Dプリンタの樹脂は、電源やGPUの近くでは温度に注意してください。PLAは50℃前後で変形します。
アクリルは見た目のために使われますが、単体では強度が不足します。骨組みを金属にして、面材として使うのが現実的です。
風の通り道
ファンの数より、入口と出口が向かい合っているかのほうが効きます。入口の面積が足りないと、ファンを増やしても風量は増えません。
吸気を排気より多くすると内部が正圧になり、隙間からの埃の侵入が減ります。フィルタは吸気側だけに付ければ足ります。
GPUは自分で吸って自分で吐きます。GPUの下側に空気が入る隙間を確保してください。ここが詰まると、他をいくら冷やしても温度が下がりません。
少量生産のケース工房
既製品では満たせない要求がある場合、少量生産の工房という選択肢があります。18社を国別に並べました。設計思想がそれぞれ違うので、目的に近いところから見てください。
| 国 | 工房 | 特徴 |
|---|---|---|
| アメリカ | Sliger | SM550/SM580、Cerberus。板金の自社製造 |
| アメリカ | Velka / Velkase | Velka 3/5/7。3〜5L級の極小 |
| アメリカ | Winter Charm / WCC | 少量生産のオープンフレーム系 |
| オーストラリア | Xproto (Singularity Computers) | 水冷前提のオープンフレーム |
| オランダ | Streacom | DA2 / FC・DBシリーズ。ファンレス筐体も |
| スウェーデン | LOUQE | Ghost S1 / Raw S1。意匠と冷却の両立 |
| スウェーデン | Fractal Design (Terra) | Terra。木材前面の10.4L |
| チェコ | Thor Zone | Mjolnir。5L級でフルサイズGPU |
| ドイツ | Dan Cases | A4-H2O / A4-SFX。SFF筐体の原点のひとつ |
| フランス | Geeek | A50/A60。自作キット的な販売形態 |
| 台湾 | Cooler Master (NR200P MAX / NCORE) | 大手だがSFFに本気の系統 |
| 中国 | FormD | T1。容量を組み替えられるサンドイッチ構造の代表格 |
| 中国 | NFC Systems | S4M / S5. 薄型サンドイッチ |
| 中国 | SSUPD (Lian Li) | Meshlicious / Meshroom。メッシュ全面 |
| 中国 | Jonsbo | アルミ削り出し。V/Nシリーズ |
| 中国 | K39 / Custom Mod | K39/K55。3〜4L級の超小型 |
| 中国 | Metalfish | S3/S5/T40。安価な小型アルミ |
| 中国 | Mechanic Master | C34/C28。極小志向 |
在庫と価格は各社の公式サイトで確認してください。少量生産のため、受注期間が限られることがあります。
よくある質問
ケースを自作するのに特別な工具は必要ですか?
板金を自分で加工するならベンダー(曲げ機)とニブラが要ります。設計だけ行い、レーザー加工と曲げを業者に出す方法なら、手元の工具は組み立て用のドライバーとリベッターで足ります。
少量生産のケースは既製品と何が違いますか?
設計が特定の目的に振り切っている点です。体積を最小にする、静音に特化する、特定のラジエーターを積む、といった目的のために、汎用性を捨てています。そのぶん対応する部品の制約は厳しくなります。