Thrustmaster T98 レーシングホイールとペダルセットは、フェラーリ公式ライセンスを掲げながら3万円台前半で買えるエントリー向けハンドルコントローラーです。この記事では、公開されているスペックとレビュー評価をもとに「誰が買うと満足でき、誰は買うべきでないか」まで踏み込んで整理します。
概要
T98は、10インチ径(254mm)のステアリングホイールとホール効果センサー式ペダルをセットにした、PS5/PS4/PC対応のエントリークラス製品です。最大回転角は240度で、フォースフィードバック(FFB)モーターは搭載せず、バンジーコードによる抵抗と自動センタリングでハンドルの手応えを作っています。デザインはフェラーリ 296 GTBがモチーフで、ステアリング上にはマネッティーノセレクターを備えます。
結論から言えば、T98は「パッドからの卒業」を最短距離で叶える製品です。ダイレクトドライブ機や上位のベルト駆動機のような路面情報の再現は狙っておらず、そのぶん価格・重量・設置性を優先しています。Amazon.co.jpのレビューは251件で5つ星のうち4.3(好評率およそ86%、2026年6月取得時点)と、エントリー機としては素直に高い評価です。ただしこの評価は「この価格帯の製品として満足できたか」への回答であって、上位機と同じ体験が得られるという意味ではない点は押さえておきたいところです。
互換性ガイド
対応プラットフォームはPlayStation 5、PlayStation 4、PC(Windows)です。USBケーブルによる有線接続で、追加ドライバーのインストールを前提としないプラグアンドプレイ設計とされています。ペダルは本体とは別体で、ホイール側に接続して独立した信号を出力します。
物理的な取り付けで最初につまずきやすいのがクランプです。公称の対応厚は1.8インチ(約45mm)まで。厚天板のダイニングテーブルや、天板の縁にフレーム・幕板・引き出しレールがある事務机ではクランプが噛まないことがあります。購入前に、実際に固定したい位置の天板厚と、天板下に障害物がないかを定規で測っておくのが確実です。製品サイズは30×27×34cm、重量は3.31kgと軽量な部類なので、クランプが効かない環境では走行中にズレる可能性があります。
もうひとつ注意したいのが対応機種の範囲です。公開されている情報の範囲ではXbox系コンソールは対応に含まれていません。Xbox Series X|S で使う前提の方は、この時点で選択肢から外れます。PCで使う場合も、ゲーム側が240度という回転角を前提にしていないことが多いため、タイトルごとのステアリング感度・リニアリティ設定の調整はほぼ必須と考えてください。
240度という回転角をどう考えるか
T98のスペックで最も特徴的なのが、最大回転角240度という数字です。実車のステアリングはロック・トゥ・ロックで概ね2〜3回転、SIMレーシング向けの上位ハンコンは900度前後まで回るものが一般的なので、240度はかなり切り詰められた設計です。
これは欠点というより性格の違いです。240度なら手を持ち替えずに(クロスハンドを使わずに)フルステアまで届くため、パドルシフトと組み合わせてサーキット系のレースゲームを走るぶんには操作が完結します。逆に、大舵角を使うラリー、ドリフト、駐車操作を含むオープンワールド系や、リアルな舵角比を前提にしたシミュレーターでは、回転角の不足がそのまま「曲がらない・当て舵が効かない」という不満になります。自分が遊ぶタイトルがどちら寄りかを、買う前に一度考えてみてください。
フォースフィードバック非搭載という割り切り
T98はFFBモーターを持たず、バンジーコードのテンションで中立位置に戻る方式です。ステアリングは常に一定の重さで戻ろうとするだけで、タイヤの限界、路面のバンプ、縁石、アンダーステアの発生といった情報は手に伝わりません。SIMレーシングで「FFBは上達に効く」と言われるのは、まさにこの情報が滑り出しの予兆を教えてくれるからです。
したがってT98は、没入感と操作系(丸いハンドルとアナログのペダル)を手に入れる製品であって、路面情報を受け取る製品ではありません。ここを理解せずに「安いハンコン」として買うと、パッドから乗り換えた直後の感動が落ち着いた頃に物足りなさが来ます。逆に、FFBのモーター音や振動を気にせず夜間でも遊びたい、家族と共有する机に据えたいといった事情がある人にとっては、非搭載はむしろ利点にもなります。
ペダル側にホール効果センサーを採用している点は、この価格帯では素直に評価できます。接点の摩耗による入力のガタつきやチャタリングが起きにくく、長期的な入力精度の安定に効く方式です。
商品情報
公開されている主なスペックは以下のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ホイール径 | 10インチ(254mm) |
| 最大回転角 | 240° |
| 製品重量 | 3.31kg |
| クランプ最大対応厚 | 1.8インチ(約45mm) |
| 製品サイズ | 30 × 27 × 34cm |
発売日は2025年10月15日です。付属品はホイール本体、ペダルセット、クランプ取付具、USBケーブルで、箱から出してすぐ走り出せる構成になっています。保証期間はメーカー規定に準じるため、購入前に販売ページと同梱書類で確認してください。
価格は、Amazon.co.jpで2026年6月4日取得時点で¥33,539、2026年8月27日取得時点で¥33,898でした。いずれも取得時点の実売価格であり、セールや在庫状況によって変動します。実際に買うときは必ず商品ページで最新の価格を確認してください。なお海外マーケットプレイス側には製品クラスに対して不自然に高い金額が掲載されているのを確認しているため、本記事ではその数字を採用していません(後述の注意点を参照)。
重量3.31kg・実測30×27×34cmというサイズ感は、専用のコックピットを組まずに机へ据える運用を想定した数字です。使わないときはクランプを外して棚にしまう、という使い方が現実的にできる重さでもあります。
競合製品との比較
同じThrustmasterのラインアップでも、T128やT300 RSといった上位モデルはFFBモーターを搭載し、回転角も大きく取られています。予算を2〜3倍かけられるなら、体験の質という点では上位機のほうが確実に伸びしろがあります。ダイレクトドライブ機(MOZA R3/R5など)まで行くと、トルクと応答性は別物です。
T98の立ち位置は、それらと同じ土俵で競うのではなく「ハンコンという操作系を最も安く、最も設置しやすい形で試す」ところにあります。SIMレーシングを続けるか自分でもまだ分からない段階なら、いきなりダイレクトドライブ機とコックピットに投資するより、T98で半年遊んでから判断するほうが失敗が小さい、という考え方は十分に合理的です。
おすすめユーザー
次のような人にはT98が向きます。
- パッドからの初めてのステップアップを考えている人。 丸いハンドルとアナログペダルという操作系の変化だけでも、レースゲームの体験は大きく変わります。
- 設置スペースが限られている人。 3.31kgと軽く、工具不要のクランプで着脱できるため、共有の机や折りたたみデスクでも運用しやすい構成です。
- フェラーリのデザインに価値を感じる人。 296 GTBモチーフの外観とマネッティーノセレクターは、公式ライセンス品ならではの要素です。
- 静かに遊びたい人。 FFBモーターを持たないため、駆動音や机への振動伝達を気にせず夜間でも使えます。
- PS5/PS4とPCの両方で使いたい人。 3プラットフォームに直接対応し、追加ソフトの導入を前提としません。
購入前の注意点
回転角240度は上位機の3分の1程度です。 900度前提で作られたシミュレーターやラリー系タイトルでは舵角が足りず、ゲーム側の感度設定を上げて補うことになります。補正はできますが、実車の舵角比を再現したい人には根本的に合いません。
フォースフィードバックは搭載されていません。 「ハンコン=振動する」と思って買うと確実に期待外れになります。タイヤのグリップ限界を手で感じ取りたい、FFBでライン取りを学びたいという目的なら、予算を足してFFB搭載機を狙うべきです。
クランプの対応厚は45mm程度までです。 厚天板・幕板付きの机では固定できません。固定が甘いまま使うと、コーナーでホイールごと動いてしまい、操作精度以前の問題になります。設置予定の場所を先に測ってください。
Xbox系での動作は想定されていません。 対応表記はPS5/PS4/PCです。将来Xboxに移行する予定があるなら、この点は購入判断に含めてください。
価格表示の食い違いに注意してください。 本製品は販売チャネルによって表示価格の差が大きく、海外マーケットプレイスには製品クラスに対して不自然に高い金額が出ているのを確認しています。また販売元ラベルと実際の販売サイトが一致していない表示も見られました。並行輸入や別バリエーションの出品が混ざっている可能性があるため、購入前に販売元・保証の有無・同梱物を商品ページで確認することをおすすめします。
商品ページの登録情報自体が誤っていることがあります。 メーカー名・型番・対応機種の記載が別商品のものになっている例は珍しくありません。商品画像とタイトル、そしてペダルセットが同梱されているかどうかを自分の目で確かめてから注文してください。
よくある質問
Q. Xbox Series X|S で使えますか?
A. 公開されている対応プラットフォームはPS5、PS4、PC(Windows)です。Xbox系は対応に含まれていないため、Xbox用途では別製品を検討してください。
Q. フォースフィードバックはありますか?
A. ありません。バンジーコードによる抵抗と自動センタリング方式です。路面やタイヤの情報は手に伝わらない仕組みです。
Q. 240度の回転角で普通にレースゲームを楽しめますか?
A. サーキット系のレースゲームであれば、ゲーム側のステアリング感度を調整すれば十分に楽しめます。大舵角を多用するラリーやドリフト、駐車操作の多いタイトルでは物足りなさが出ます。
Q. シフターやハンドブレーキは追加できますか?
A. 本体にはパドルシフターが備わっています。外部シフター等の増設可否は公開情報からは断定できないため、必要な方は製品ページの対応アクセサリー欄で確認してください。
Q. 専用のコックピットは必要ですか?
A. 必須ではありません。厚さ45mm以下の天板であればクランプで直接固定できます。ただし机がぐらつく場合や本格的に走り込む場合は、スタンドやコックピットの導入で安定性が大きく改善します。
Q. ペダルは別売りですか?
A. ペダルセットは同梱されています。ホール効果センサーを採用しており、接点摩耗による入力の劣化が起きにくい方式です。





